「競争より共生の社会をめざして」
公益財団法人 きずな育英基金
代表理事
今や我が国は、あらゆる分野に急速に競争原理を導入した結果、極端な強者と弱者を生み出して、他方では医療・介護・年金等の社会保障が弱体化して社会全体のセーフティネットが崩壊しており、経済格差は一層拡大し固定化しつつあります。 経済格差が固定化すると、チャレンジをしても無駄という風潮が生まれ、次の世代への貧困の連鎖につながります。1980年代の前半までは,日本も総中流の時代と言われ「共生」の原理が社会に残っていましたが、今や「共生の原理」は失われつつあり、「競争の原理」が強調され、誤った自己責任が強くもとめられる時代となりました。 このような深刻な経済格差は、高齢者の老後不安を生み出すと共に、将来の日本の成長を担う子ども達にも深刻な影響を与えています。
例えば、子どもの貧困率は年々高くなり、OECD(経済協力開発機構)によれば、日本の子どもの相対的貧困率はOECD加盟国のなかで13番目に高く、7人に1人です。ひとり親家庭になると貧困率は一挙に跳ねあがり、2人に1人が相対的貧困にあると言われています。 私も、父を戦争で亡くし、ひとり親家庭で母の苦労を肌身に感じながら育ちました。幸い先生などの周囲の人達の善意に支えられて50数年前に法律家となり、現在の弁護士法人梅ヶ枝中央法律事務所を創設し、今も弁護士業を営んでいますが、2013年に、私財をすべて提供して、「公益財団法人梅ヶ枝中央きずな基金」を創設し、現在は「公益財団法人きずな育英基金」との新たな名称で支援活動を続けています。
この基金は、ひとり親家庭、父母ともにいない家庭や事情があって両親と離れた生活を強いられているなかで、相応の学力等を発揮しているものの、更に強い向上心をもっている中高生を対象に塾代等の教育資金の一部を支援しようとするもので、支援を始めた子ども達には高校卒業まで継続して年間30万円から50万円を給付し、その間、交流会等のイベントを通じて子ども達の成長を見守っています。 支援を始めた子ども達の中から将来、日本の成長を担う有為な人材がひとりでも多く出ることを期待しています。 また、貧困状態にある子ども達の教育を支える支援の輪が広がり、社会の貧困の連鎖が解消されることを願っています。